「手塚治虫の学習マンガが、お色気すぎる 後編」by池袋心療内科ゆうメンタルクリニック

こんにちは。

さて「手塚治虫の学習マンガがお色気すぎる」の後編です。

カンタンにまとめますと、手塚治虫先生が監修された「世界の歴史」という学習マンガが自由すぎて、当時の子供たちにとって、別の意味で記憶に残ったという話でした。

さぁ、二巻に行きましょう。

二巻は「専制への道」。

サブタイトルが「秦の始皇帝」です。

………この時点で「メインタイトルとサブタイトルが逆では」とか思うんですけども。

まぁ、一言で言いますと、右にいる少年二人が今回の主役です。

言うまでもなく「実在しません」。

完全なフィクションキャラです。

この二人が、秦の始皇帝の世界で、頑張って生きていくという物語です。

ちなみに中国の歴史に詳しい方はご存じかと思いますが、この時代に、二人の英雄が出ます。

それこそが、項羽と劉邦。

でも。

登場シーンは、ほぼこの1ページだけです。

その100倍以上、最初の少年たちが出てきます。

たとえば太ってる方の少年は、始皇帝の後宮(女性たちがいるところ)の門番になります。

そして、その中の女性「ジェシカ(外国人です)」と深い関係になります。

ここでジェシカは「私を連れて逃げて!」と言います。

しかし少年は「無理だよ」と答えます。すると!

「意気地なしっ!!」

と叫んで、一人で逃げていきました。

まぁ、この時点で、ジェシカは「この少年と一緒になりたかった」というより「ただ逃げたかっただけ」と分かりますね。

でも、ジェシカは出た直後に、殺されてしまいます。

そして少年は泣きます。

「ジェシカーッ!!」

………。

だからそこ、「世界の歴史」とはほとんど関係ないから。

世界史のテストで、秦の始皇帝に関するテストが出たときに、「ジェシカ」が答えになる問題とか、存在しませんからね。

そもそもジェシカも、実在しませんからね。

とにかく世界史を舞台に、手塚治虫先生が、描きたいドラマ描いちゃってるだけですからね。

さぁ、これだけ大半のページを好きに展開するわけですが、さすがに先生(もしくは編集さん)も、「このままでは勉強にならない」と思ったのでしょう。

途中で全力で、歴史の背景を説明します。

文字多すぎ。

ページの90%以上を彼らのドラマが占めるため、残り10%くらいに、史実が凝縮されます。

そのためもう、文字ばっかりです。

これホント、マンガにオマケの「勉強小冊子」をつけた方が良かったんじゃないかと思うほどです。

 

さぁ、そしていよいよ、大詰めの三巻。

「大いなる理想」 サブタイトルが「ギリシアとローマ」。

もうサブタイトルがメインタイトルなのは、お約束です。

まぁ、とにかく今回メインの登場人物は二人です。

左の金髪が「オクタビアヌス」。

ローマ帝国の初代皇帝です。

右は「アルゴス」。

………。

オリジナルキャラクタです。

二人が同じくらい堂々と表現されてますから、非常にややこしいですね。

さてそんな二人、少年時代に女性に出会います。

 

いかにも昔のマンガっぽい!

なんかすごくなつかしい。

そんなほのぼの展開だったのですが、その途中!

彼女も殺されてしまいます。

このマンガは、1~3巻のすべてにおいて「美女は必ず殺される」という法則があります。なんでやねん。

アレでしょうか。

ヘタに生き残ってしまうと、主役たちと結ばれるとかの話になり、すると子供の話とかになってきてややこしくなるからでしょうか。

何にせよまぁ、死にます。

そしてこの3巻も、大半を彼らのドラマに費やしており、その結果。

 

こうなります。

文字多すぎ。

ほんとカンベンしてほしい。

さぁ、そんな3巻もいよいよ大詰めです。

とにかくオクタビアヌスは皇帝となり、無事にこの巻のテーマは終わりました。

その、あとですよ。

最後に「その後のローマ」が描かれるんですが。

そこで、いまっだに記憶に残る、激しいページがあるんです。

もう、このページの記憶だけで、あらためて今回の一連の記事を書こうと思ったといっても過言ではありません。

よろしいでしょうか。

心の準備は大丈夫でしょうか。

 

 

それこそが、こちらです。

激しい!

何で!?

何でこんなことになってるの!?

これホント、全国の少年少女はビックリですよ。

唐突にコレですからね。ホントに。

何の脈絡もなく「その後のローマ」としてこのページです。

当時は「何だろうこれ!? パーティ!?」くらいに思ってました。
それくらい理解できず衝撃的だったのです。

もう、この絵のインパクトで、下の文字なんて読む余裕はなかったんですが。

今、強いて下の文字を読みますと。
おそらくこの絵の「説明」になっているだろう部分は、

「しかし、五賢帝最後のマルスク・アウレリウス帝のころから政治は乱れはじめ」

ではないかと。

そこ以外、このイメージに当たるテキストが見つかりません。

すなわち「政治が乱れる」ことのイラスト化がコレ。

政治が乱れるというか、いや、侵略!?

それにしても、若い男女しかいませんからね。

なんか本当に、「政治の乱れってスゴイ」と思います。

というわけで、いかがでしたでしょうか。

ちなみにこの「世界の歴史」。

四巻以降は、さすがに教育上の問題があると思われたのか、手塚治虫先生の情熱が落ち着いたのか分かりませんが、
「無難な歴史マンガ」になっています。
ある意味、一番のピークはこの三巻までです。

ちなみにそれ以外にも、昔の学習マンガは結構自由で、それについては
こちらのアドラー心理学でも紹介しましたので、未見の方はぜひ。

最近はこういう学習マンガはほとんどなくなり、大半は無難なものになっていると思います。
しかしすべてを「無菌」にしたからといって、子供が健康的に育つわけではありません。
個人的には、こういうマンガを子供が読むことも、いい意味で刺激になり、幅広い大人になるのではないかと思います。

そう、自分みたいに!

………。

説得力が逆方向に増したことをビンビン感じつつ、ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。

 

(完)